「官能小説」を読んだことがあるだろうか。
ないとしたらなぜこのエロライトノベルのサイトにいるのか、道に迷うにしても迷い方というものがあるだろう
官能小説とは、ネット事典よると「官能に訴える、つまり男女間もしくは同性間での交流と性交を主題とした小説の一ジャンル」のことである。
つまり、オシリス文庫作品もライトノベルながら広義では官能小説にあたる。
しかし「官能小説」と言われてまず思い浮かぶのは、黒い背表紙に「人妻」「未亡人」「美少女」という、小学生にとっての「カレー」「ハンバーグ」「オムライス」に相当する垂涎ワードを惜しげもなく並べ、表紙にはやたらリアルタッチの美女が描かれている文庫本ではないかと思う。
それらの官能小説は駅のキヨスクに高確率で置かれている、だがキヨスクに置かれているということは、乗り物の中で読むことを想定されているのであろうか。
車内で官能小説を読んで興奮状態になっていったいどうしようというのか、衆目の中で「座席に座っているのにたっているモノなーんだ」というなぞなぞ状態になってしまったら鉄道警察出動の恐れもなくはない。
それとも「儂(わし)レベルになると、東京大阪間程度の官能小説鑑賞ではピクリともせんよ」という、中高年男性の度胸試しのために置かれているのだろうか。
キヨスクに置かれている官能小説の謎はいまだに解けていないのだが、昔から気になる存在だったのは確かである。
そして20歳を過ぎたころ、いったいあの手の本にどれだけエロいことが書いてあるのか一度確かめてやろうと思い、今はなき近所の本屋へ車を走らせた。
書店の官能小説コーナーというのはやたら種類が豊富であり、どれを選ぶべきか迷ったが、宗教上の理由で凌辱系は読まないため、できるだけ和姦そうなものを選んだ。
しかし、官能小説だけレジに持っていくというのは勇気がいる、よってカモフラージュとして一般誌も一緒に購入するのがエロ本を買う時の作法である。
店員はそんなこと気にしてないと思うかもしれないが、これは己(おのれ)の心のためにする「儀式」なのだ、邪魔すると呪われるので口を出すべきではない。
その時私が選んだブラフ本はなにを思ったのか「ゴスロリファッションブック」であった。
今思うとエロを隠すというより、官能小説を買うという恥に、別方向の恥をぶつけただけに過ぎないような気がするが、それで相殺されたと信じている。
儀式を無事終え入手した官能小説だが、童貞男子である主人公がふたりのお姉さんキャラとエロいことをするという、スタンダードな内容である。
しかし、使用済みのパンストやパンツの匂いを嗅いだり、顔面騎乗をしてもらったりと、フェティシズムな内容が延々続き、いっこうにセクロスしないのだ。
そして最終的に、片方のお姉さんに「アナルセクロス」をし、もうひとりのお姉さんに「俺!この手術が終わったらお姉さんとセクロスするよ!」と宣言して終了、という打ち切り漫画のような終わり方をしてしまった。
興味ないとは思うが、主人公は難病設定であり、牛乳瓶大の巨根の持ち主なのだが、最後の最後でそれよりもはるかに巨大な死亡フラグを立ててくれた。
つまり「俺の知っているセクロス」が1回も行なわれないまま終わったのだ。
あれだけ、子どもの頃から「とんでもなくエロいに違いない」と思っていた本に1回もセクロスがないという事実にショックを受け、それ以来あの手の官能小説には手を出していないので、ほかの古典的な官能小説がどうなのかはいまだに知らない。
今回紹介する作品は、そんな「官能小説」が重要なテーマになっている。
『路地裏古書店 淫乱堂』
これが今回紹介する作品である。
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)