「くっ殺せ……!」
ここで問題です、この女騎士は誰に向かってこのセリフを言っているのでしょうか?
これはエロファンタジー試験の初級問題かつ、己(おのれ)の性癖を相手にアピールする絶好のプレゼン機会である、ここで下手を打つと挽回が難しい。
エロファンタジー知識がない方に一応説明しておくと、冒頭のセリフは劣勢となった女騎士が、生きて恥をさらすぐらいなら誇りを持ったまま死にたいと、敵に潔く殺すようにうながすセリフである。
しかしエロファンタジーの世界でこの女騎士の願いが叶えられることは2億パーセントない。
もし、潔く殺そうとする奴がいたら、先にそいつが抹殺されると思う。
「女騎士を待っていたのは潔い死ではなく、死ぬより辛い辱め(主に性的な)の数々であったとさ、めでたしめでたし」というのが昔から親しまれている「童話おんなきし」の大まかなストーリーである。
しかし、さるかに合戦で牛糞が出てきたり出てこなかったりするように、同じ童話や昔話でも微妙にディテールが異なる場合がある。
それと同じように「おんなきし」の物語も流れは同じでも、細かいバリエーションは多いのである。
そこで冒頭の問題に戻るが、女騎士の懇願を無視して辱めの限りを尽くす相手は誰か、という話である。
スタンダードに「薄汚い盗賊団」という人もいれば、精神的ダメージも与えるべく「かつて部下だった兵士たち」というテクい人もいるだろう。
もちろん、人間相手など手ぬるい、せっかくファンタジーなのだからモンスターを使うべき、つまり「触手」一択という人も多いはずだ。
だが間違っても「敵国のイケメン騎士」などではダメなのだ。
ティーンズラブ業界ならギリギリありかもしれないが、男性向けエロ業界の面接でそんな答えを出したら、即刻履歴書と交通費を返されて退場である。
女騎士といえば「高潔」なことが売りであり、その高潔さが汚されるところが古典的男性向け女騎士モノのトロなのである。
つまり女騎士は絡む竿役が汚ければ汚いほどSNS映えするのだ。
よって女騎士に「くっ殺せ……!」と言われるのは、小汚くても人間であればいい方で、醜いモンスターであることも珍しくない。
オシリス文庫も男性向けであることは否めないが、女性にもわりとおススメできるのは、ラノベらしく、棒側も結構イケメンだったり、パッと見で冴えなくても、実は有能だったりと、女から見ても魅力的である作品が多いからだ。
あとヒロインの方も男の性欲につき合わされているというわけではなく常に「この女ノリノリである」とナレーションがつきそうなほどエロに対して前のめりなところがいい。
しかし「特にとりえがない」という設定のくせにやたら女にモテるというとりえを持った主人公や、無気力そうなイケメンが「やれやれ」とか言いながら美少女にフェラされるエロ創作を読んでもなにも癒されないという人もいるだろう。
だからといって、古典的女騎士モノのように婦女子が汚い生物にひたすら凌辱されるのはちょっと、という人も多いはずだ。
そんな偏食持ちの息子さんに悩まされている人におすすめなのが、今回紹介する作品である。
『紳士なオークを目指します』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)