よく考えてみたら私は一般で言う「ライトノベル」を読んだことがない。
しかしアダルトライトノベルに関しては、この連載を始めてからかなりの本数読んできた。
「原作は知らないが、エロ同人誌はクソほど読んできた」と言っているようなものだが、同人誌にも面白いものはたくさんあるし、時には原作よりも命をかけて入手しなければいけない薄いDB(ドスケベブック)もあるのだ。
オシリス文庫作品もエロ本には違いないのだが、ファンタジー小説や青春小説としてしっかりしたものも多く、読んだことはないが「今の一般ラノベもこういうのがはやっているのだな」ということをうかがい知ることができる。
まずわかったのは、いまだにみんな「異世界転生」が大好きということだ。
『俺の実姉の父がエロすぎるんだが!?』みたいな、一見異世界とは関係なさそうなタイトル、そもそもそれは普通にお前の親父だろ、というような作品でも開いてみたら、冒頭3行で異世界転生してきた結果親父がエロい話だということが明かされるなどする。
もはや「犬も歩けば棒に当たる」が「車に轢かれりゃ異世界転生」に変わる日は近い。
しかし、異世界転生が嫌いかと言うと、むしろ好きである。
いきなり異世界に転生して、エルフとかと一緒に剣と魔法で冒険、と言われたら突拍子もない話に聞こえるが、昭和のRPGキッズからすればむしろ「おなじみの世界」なのだ。
日本には、ドラ焼きを食え、みたいなタイトルの人気RPGがある。
初期のドラ(焼きを)食えの始まり方は、いきなり主人公が王様に呼び出しを食らっているシーンから始まり「お前は勇者だから世界を救え」という命令とともに、銅でできた剣と50円を渡されてモンスターがはびこる世界へと放りだされる、というものであった。
聞きたいことは100億個くらいあるはずなのだが、主人公はそれに異論をはさめないシステムになっており本当にそれだけで世界を救う旅に出かけるのだ。
それに比べれば、トラックに轢かれたあと、謎の空間で出会う女神とかはまだ状況を説明してくれている方であり、主人公にも「ちょ、待てよ」程度の異論をはさむ人権が認められているため、初期RPGを通った人間からすれば異世界転生の冒頭というのは突拍子もない話ではなく「親切なチュートリアル」なのだ。
また、レベルやアイテム、スキルというような概念もRPGではおなじみなものなので、そこまで詳しい説明がなくてもすぐ理解することができる。
つまり異世界転生ものは元勇者、現中年にとってはノスタルジーもあり、年々リソースが減っている脳でもすんなり入り込めるジャンルなのだ。
また、現世ではうだつがあがらなかったが、異世界では無双、という話が多いのも、すでに現世での活躍を諦めた中年にとっては夢があって大変よろしい。
今回紹介するのは、そんな中年の脳と胃にも優しい、スタンダードな異世界転生作品である。
『ダンジョンが思ったよりも深くてどうしようもないので諦めて女の子を口説いていくことにした』
これが今回紹介する作品だ。
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)