若者の「出世離れ」が深刻化しているという。
組織の中で「がんばって出世してやろう」と思う若者が減ってきているそうだ。
セックスをはじめ、酒や車などありとあらゆるものから離れ続け、そろそろ地球外へ脱出してしまいそうな現代の若者さんだが、これは単に「最近の若者は元気がない」という話ではない。
仮に元気がなかったとしても、若者から元気を奪ったのは、今の世の中を作った現ジジイとババアである。
ご存じのとおり、今の日本は「若いころヤンチャしてもすぐに取り返せる」と思える要素が一切ない。
そりゃ、最高のナオンとベッドでドン・ペリニヨンではなく、フローリングの床に直座りでタブレットのミニマリストになってしまうわいな、という話である。
○○離れの元祖とも言える「セックス離れ」とて、若者の草食化だけが原因でない。
現代はあらゆるエンタメが低コスト化しており、漫画もゲームも基本無料は当たり前だし、音楽も定額で聴き放題だ。
それに対して「セックス」というのはあまりにもコスパが悪すぎる。
確かに世の中には、どの業界よりも早くサブスクリプションを取り入れたヤリ田マン子さんもいらっしゃるが、そうそうエンカウントできるものではないし、そういう方にすら「だが、てめーはダメだ」と言われてしまうこともある。
ちなみにヤリ田さんによると、気に入った相手となら即ヤリするだけで、そうでない相手とは普通にしないそうだ。
基本的にセックスには「交渉」が必須であり、そこに長い時間、時には食事やプレゼントなどの金がかかる場合がある。
もし、そこをスキップしたければ、専門店に安くない課金をする必要がある。
さらにセックスの性質(たち)が悪いところは「これだけ金と時間をかければ必ずヤれる」という「天井」が設けられていない点だ。
ソシャゲのガチャですら「これだけ出せば必ずキャラをゲットできる」という「天井」がある場合が多いし、ないゲームですら「天井はない」と最初から明言してくれている。
それに対し、セックスは天井がないとは言いきらず「もう1回飯をおごればヤレそう」な雰囲気を出しておきながら、実は「当たりが最初から入っていない」ということが平気であるのだ。
月1000円程度払えば、膨大な本や音楽を楽しみ放題な世の中において、あまりにも費用対効果が悪すぎる。
つまり、若者がセックスから離れてしまったのは、若者のせいではなく、セックスのエンタメとしての企業努力の足りなさ、「そうは言うても、人間は俺たちのこと好きだし」と、三大欲求のひとつであることにあぐらをかいた結果である。
しかし、どれだけコスパが悪くても、いまだにセックス好きな人は多く、芸能人にもたとえ仕事を全て干されようとも配偶者以外とセックスをしてしまう熱心なセックスファンは多い。
また、手間はかかるが、セックス自体は楽しい行為と言ってもよい。
それに対し最近の「出世」というのは徹頭徹尾「うま味ゼロ」になってきているらしい。
出世して給料が上がるかというと、逆に残業代がつかなくなり「ワンチャン下がるまである」が現実だそうだ。
ならば立場的に偉くなれるかというと、下手に中間管理職になると、上司からの圧はもちろん、下に対しても強く言えば、自称繊細な若い者がすぐ来なくなってしまう。
本物の繊細な人は「行かない」などという豪胆すぎる行動はとれないはずなのだが、部下が辞めれば指導が悪いということになり、人員が減ったぶんさらに仕事はキツくなる。
そして悩んでいるところに、自称サバサバ系の同僚が「あんた気にしすぎなのよ、アタシだったら……」という自分語りをネチャネチャした声で言ってくるのだ。
出世なんかしたせいでどんどんハゲていくパイセンを見れば若者が「出世なんかするもんじゃない」と思うのは当然である。
そして出世がウマくないのはファンタジー界も同様のようだ。
今回紹介するのは、下手に中間管理職になったせいで大変なことになった人のお話である。
『魔王軍の中間管理職(♀)』
これが今回紹介する作品だ、タイトルどおり、久しぶりに女性主人公の話である。
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)