異世界転生モノはお腹いっぱい、そう言い続けて3年間くらい経過してしまったような気がするし、下火になるどころか今も数が増え続けている。
読む側からすれば「とりあえず異世界転生しとけばウケると思いやがって」かもしれないが、もはや転生なんて「しているのが当たり前」の時代である。
そのうち「このキャラは呼吸している」とイチイチ書かないように「転生している」という部分は省略して書かれるようになるかもしれない。
つまり、今から転生モノをはじめるというのは、手堅くはやりに乗っているように見えて、定年後退職金でラーメン激戦区に参戦ぐらいの蛮勇になりつつあると言っても過言ではない。
ならばあえてラーメン激戦区で蕎麦を出せばいいかというと、それは「珍妙な格好をしてはやりの服を着ている連中を小バカにするのがカッコいい」と思っていたあの頃の俺たちと同じ発想だ。
はやりに乗りつつもその中で新しいことをする、というのが賢いやり方である。
流行に乗るというのは決して安易な方法ではないが、ある種の「近道」であるのは確かなのだ。
はやっているということは、みんながそれを知っているため、ある程度「説明」をする手間と「納得」をさせる手間が省けるのだ。
現に今のラノベを知っている人なら、最初の一行目に「俺はトラックに轢かれて異世界に転生した」と書かれていてもなんの疑問も持たないし、むしろ一瞬で「把握」となるだろう。
しかし、異世界転生という概念が一般化してなければ「トラックに轢かれたら死ぬのでは?」と開始3秒で「なんかこの話、入り込めねえぞ」となってしまう。
今までにない設定や世界観の作品というのは、読者にそれを理解させるのに時間がかかってしまい、そのあいだに脱落者を出しすぎると「設定を説明し終わった時点で終了」という「本編なしの説明書」みたいな話になってしまう。
特に中年以上になると「新しいことを覚えるのが面倒」という理由であらゆることを断念するため、説明に尺を取り、面白くなるのに時間がかかりすぎる作品というのは高齢化社会に向いていない。
その点、異世界転生ものは「異世界転生とはなにか」という説明がいらず、1ページ目から「冴えないおっさんだった俺がトラックにはねられてカワイイおっさんに!?」と面白いところから始められる、という点が強い。
だが問題は便利ゆえにみんなが使っているメソッドの中でいかに目立つかである。
流行の中で目立つ方法として一番スタンダードなのが「逆張り」そして「意外性」だ。
昔の転生モノであれば「乙女ゲーのヒロイン」に転生していたものをあえて「悪役令嬢」の方に転生するという趣向はかなり新しかった。
しかし、今度はみんながこぞって悪役令嬢に転生しはじめたので、今ではヒロインや悪役令嬢ですらなく「モブ女」に転生する者も増えており、そのうち一周回って「乙女ゲーのヒロインに転生するなんて新しい」になりそうな気がする。
ともかく異世界転生モノが乱立する今、どれだけ意外性のあるものに転生するか、というのは非常に重要である。
そんなわけで今回は「オーク」に転生してしまった男の話だ。
『お前はまだオークを知らない。』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)