「最近の大人は異世界転生とか現実逃避的なものばかり読んでいて嘆かわしい」
そんな意見をたまに聞く、もしくはそう言われているのでは、という被害妄想を抱いている。
確かにクソな現実からの逃避先として創作があることは否めないし、私だって今、映画とか見るなら深い人間ドラマより、大の大人が全身タイツを着て戦ったり、頭髪の薄いカッコいい人がサメと素手で殴り合ったうえに勝ったりするような作品を選ぶ。
しかし、「異世界=現実逃避」というのは誤解である。
なぜなら昨今の異世界転生ものに出てくる異世界というのはけっこう「現実的」なのだ。
なにを言っているかわからないと思うが、読んで字のごとくである。
ブラック企業から逃れて剣と魔法の世界で大冒険かと思いきや、異世界もわりと不景気かつ人手不足で、職種がリーマンから冒険者に変わっただけで依然、ブラック労働を強いられたり、異世界にも人権やコンプラという概念が生まれており、思ったほど好き放題できなかったりと「もしかして現実とあまり変わらないのでは」という異世界がわりと多いのだ。
むしろ剣と魔法という物騒なものが合法なぶんだけ現実より厳しいまである。
さらにたとえファンタジーものでも現実の倫理にのっとって書かなければいけないという縛りがあり「18歳未満とのバトル(隠語)は禁止」というのは、現実世界のルールに過ぎないはずなのに、なぜか異世界にも適応されており、出てくるエロ要員は全員18歳以上、さらに「この世界では18歳が成人である」という、明らかに誌面の外の人に対する説明セリフが出てきたりする。
異世界だからと言って、少女をモリモリ食えるというわけではなく、食えるとしたら見た目は少女、実年齢800歳ぐらいのジェネリック少女が主である。
このように異世界でありながら「これ現実で見たことあるやつだぞ!」というひらめきが止まらないのが昨今の異世界ものだ。
おそらくファンタジーと言っても読むのは、しょっぱい現実の人間であり、しかも読者は少年少女ではなく、中年以上も多分(たぶん)に含まれている。
そういう読者が共感しやすいような、剣と魔法で戦う夢の異世界ではなく、不景気とポリコレ棒で殴られる塩分過多な異世界の出現率が高いのではないかと思う。
そして不景気に襲われているのは異世界だけではない。
先日もこの連載で戦隊ヒーローものをテーマにした作品を紹介したが、そのタイトルは「主人公がほかメンバーにパワハラを受けている」という塩味のきいた設定だった。
戦隊ヒーローがこの始末なら「魔法少女」も煽りを受けないはずはない。
『神童真姫23歳、魔法少女(代理)やってます!』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)