漫画家というのは、作家生活の中で何本も作品を描く。
実際はデビュー作が遺作になることもままあるが、担当の嫁母を同時に寝取りでもしてないかぎりは「もうネームすら送ってくるな、連絡は弁護士を通せ」とは言われない。
だが問題は、デビュー作の次になにを描くか、である。
前作が、いつまでたっても単行本化の話が出ず、連載終了後に「全部まとめて電子のみ」と言われるぐらいの失敗作であれば「とりあえず前作と違うものを書こう」という方針だけは定まる。
問題は、前作がわりと好評でファンがついた場合である。
前作の評判がよかったからと言って同じようなものを描けば「またかよ」と言われてしまう。
しかし、女の子がカワイイことに定評がある魔法少女ものがウケたあとに「たかを先生が甦りになられた!?」と見紛うばかりの劇画スナイパー漫画を描いたら、前作ファンがついてこない以前に同一作者と気づいてもらえない恐れがある。
つまり、作家性を保ちながらも、常に新しい題材に取り組んでいかなければならないということだ。
しかし、「初志貫徹」というのも大事である。
「またかよ」という罵声も、それに屈せず意志を貫き通す姿を見せつづければ「待ってました!」という歓声に変わるのである。
アダルト創作界隈も同様である。
ショタが人気と聞けば巨根の美少年を描いて「違うそうじゃない」と怒られたり「いや、そのとおりだよくやった」と褒められたり、男の娘(こ)が人気と聞けば、女の子の股間にただ棒をつけ足したようなものを出し「それだけは違う」と全方位から怒られたりと、常に流行りを追う作家もいるし、そういう作家のフットワークと殴られ慣れには畏敬の念しかない。
一方で「母が死んだ日も、妻が死んだ日も、そして自らの死の直前まで、男はただ『友達のお母さんに誘惑される話』を描きつづけた」というタイプの作家もいる。
今回紹介するのはおそらくそういうタイプの作品である。
『廃業魔王、ボンデージショップはじめます』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)