先日、フィクションのジャンルとしてのNTRが好きな男性が、リアルで自分の彼女の浮気を察知した際に「これは本物のNTRを鑑賞するチャンスでは」と思い立ち、わざわざ屋根裏に忍び込んでまで彼女と間男のプレイを拝見したところ、普通に泣いたし吐いたうえに、特に勃起もしない、という最悪の結果になったそうだ。
ちなみに彼女とも別れたらしい、ここまで綺麗な「全損事故」はそうそうない、初めからなにもなかったかのような更地ぶりである。
結局「NTRはフィクションだけにしておけ」という話だが、冷静に考えればフィクションとはいえ、こんなにNTRがジャンルとして確立しているのも異常な話である。
最愛の人がどこの馬の棒かわからんチャラ男や黒ハゲにメチャクチャにされ、太ももに正の字を書かれているのを見て、号泣しながら股間をギンギンにしている姿など、普通に悲鳴をあげるレベルの変態だ。
だがそれゆえに日本は諸外国から畏敬の念を込めてHENTAIの国と呼ばれているのだ。
普通なら悲しすぎて勃つどころかEDになりかねない惨状を見ても、萎えるどころか人生でいちばん勃起して見せる、これこそが大和魂だ。
私もHENTAIの国の末席にいる者としてNTRに興奮するだけの教養は持っているのだが、いかんせん日本女児にあるまじき脆弱な精神の持ち主で、ひとしきり興奮したあとの賢者モードの重さに耐えきれないのであまりNTRには手を出さないようにしている。
「ハピエン最高!」と心も体もハイタッチしながら帰っていくイチャラブに対し、NTRというのは興奮する体を尻目に心は腕組みをしながら終始無言、そして興奮が冷めたあとに、「さあ、落ち込もうか」と心が肩を叩いてくるのである。
つまり「興奮するけどどんよりする」のがNTRであり、勃起力がどんよりの重力に負けるようなHENTAIの国の面汚しは、ママ系のおねショタでも読んで、リアルママのおっぱいでも吸ってな、なのである。
有名なジャンルでありながら、比較的上級者向けであることは否めない「NTR」だが、オシリス文庫にもけっこうNTR作品はある。
「ハッピーエンドのためなら暴力も辞さない」でおなじみのオシリス文庫が、あと味が渋くなりがちなNTRをどう表現するのか、というとやはり重力軽めのライトNTRに仕上げてくれている。
『寝取り魔法使いの冒険』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)