「ツンデレ」といえば、今やセリフや行動のテンプレが作られるぐらい、よくあるヒロインの属性のひとつである。
しかしツンデレ自体はそこまで底の浅いものではない。
まず「ツンデレ」と聞いて気の強い美少女を連想した者はツンデレの表層しか理解できていない。
頚椎(けいつい)破壊でツンしてきたかと思えばバケツいっぱいの砂糖水でデレてくる、おさげが似合う褐色の中国拳法家や、白髪をワンポイントで活かしたセミロングが魅力的な某美食サークル部長を連想した者はなかなかいい線をいっている。
少しでもツンデレをかじっているものにとって、ツンデレが美少女のものだけでないことはもはや常識である。
口を開けば悪態ばかりの小汚い定食屋の親父が、「あまりものだ」と言って明らかに残飯でない飯を無償で文なしの主人公に与えればそれはもうツンデレであり、その親父は美少女なのだ。
だが、ツンデレが人間の属性と思っている時点でまだ青い。
ツンデレは万物に宿るものであり、こちらの存在を完全にシカトしていた自動ドアが諦めて立ち去ろうとした瞬間、豪快に開いたらそれはツンデレであり、当然美少女なのだ。
ツンデレは与えられるものではなく自分で見つけるものである。
鼻っ柱が強そうな美少女がどう見ても避けられる広い廊下で突然ぶつかってきて「ちょっとボーッとしないでよ、危ないじゃない!」と当たり屋してくるのを待っているようではツンデレとの恋は始まらない。
近くに美少女がいなければ、自分にだけ厳しいような気がする古文教師(65)を自らツンデレという設定にしにいくぐらいの気概は必要である。
しかし、それはツンデレ上級者としてのムーブであり、初心者には少し難しいかもしれない。いつか諸君たちが立派なツンデレマイスターになれるように、今回はまず「ツンデレとはなにか」を楽しく学べる入門書を用意した。
『旦那様、姫騎士様はツンデレってやつですよ、ふぁいと♪』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
(編集部注:全年齢向けです。FANZAでは配信しておりませんのでご注意ください)