人間は古来より「架空の生き物」を空想してきた。
天使や妖精など神々しいものだけではなく、時には人間に害をなす魔物も創造され、今も逸話とともに語り継がれている。
日本なら妖怪、西洋なら悪魔など、空想にもお国柄が出るものだが、ほぼ共通して出てくるのが「人間の男を誘惑して精を搾り取る女の物の怪(もののけ)」である。
なぜ世界中にそのような妖怪破廉恥が出没するのかというと、世界中の人間が「そういう怪異がいたらはかどるな」と思いついたからにほかならない。
生まれた場所や時代、肌や瞳の色が違っても「ドスケベ女モンスターがいてほしい」と願う気持ちはひとつなのだ。
まさに、人類皆穴兄弟、目頭と股間が熱くなるのを止められないラブ&ピースである。
またそれらの怪異は若くて美しい人間の女の姿をしているという点もだいたい共通している。
化け物なんだから、男の精が欲しければ問答無用でキンタマをもぎ取ってわさび醤油とかで食えばいいのに、わざわざ相手のニーズに合わせてくるところがいちいち律儀である。
しかし今は多様化の時代である。
いつまでも人間の男は若い女の外見でいけばヤれると思い込んでいるのは妖怪としてリサーチ不足である。
もはや女の姿にこだわっている時点で時代遅れであり、時には男の娘やショタで現われる多様化が妖怪側にも求められている。
またスケベ女妖怪ほど万国共通ではないが、人間に「生贄」を求める人ならざる者の話も各国で散見される。
生贄を求める側は悪魔だったり逆に神様だったりと千差万別だが、とにかく願いを叶えてほしかったり、怒りをしずめてほしかったりするなら、生贄を寄越せと無茶ぶりしてくるのである。
生贄というのは、ドストレートに命を所望している場合も多いがたまに生贄(性的な意味で)な場合もあり、どちらにしても若い生娘が捧げられることが多い。
神や悪魔から見れば80歳でも幼女であり、若い生娘なんか来た日には胎児を超えて「精子が来た?!」とびっくりしそうなものだが、なぜか一般的な人間の男と女の好みが大差ないのが生贄を所望してくる系怪異の特徴である。
だがそもそも生贄と言えば女と思っている時点で頭が固い。
今は男だって性的な意味で生贄になれる時代である、これこそが多様化社会だ。
『秘芽の蔵のタイタニア』
漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
株式会社KADOKAWA発のアダルトライトノベル。300点を超える官能小説をデジタル初出で配信中。全作品が電子書籍なのでBOOK☆WALKER、Amazon、DMMなどいろんなサイトですぐ購入できます!
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