先日50回をひと区切りにこのオシリス文庫作品のレビュー連載を終えたばかりだが、TPOに合わせていうなら、股の乾かぬうちに帰ってきた、という感じである。
今後もレビューしてもらいたい作品があれば不定期で書かせてもらえるらしいので、作家のかたにはこれからも頑張ってエロ小説を書いていただきたいところである。
話は変わるが、犯罪組織とエロほど流行りに敏感な業界はない、と言われている。
先日の新型コロナの給付金詐欺事件しかり、新しい制度やシステムが生まれると、必ずその混乱に乗じて悪事を働く者が現われるし、タピオカ屋を財源にしている反社会組織もあるという噂もあった。
片やエロは、世間で流行った漫画やアニメのパロディAVを一早く作ったり、罪者とは逆にポジティブな流行の乗り方をしている。
エロ業界が取り入れる流行は、漫画やアニメだけではなくツールやサービスも対象である。
むしろ新しいガジェットを手にしたら、たとえそれがミサイルであろうとも、一度は「これエロに使えないか?」と考えてみるのがエロ職人である。
そんなわけで今回紹介するのは、比較的新しいツールを利用した作品だ。
相変わらず「皆まで言うな」なタイトルが頼もしい。
これは不思議なアプリで気になるあの娘と異空間でいちゃらぶセックスできる予感しかしない、むしろできなかったら消費者庁案件だ。
この物語は大学生の「中出白(なかではく)」が変なアプリをインストールしてしまうところから始まる。
人様のご家庭のことに口出しするのは気がひけるが、ご両親は息子が一生この名前で生きる可能性が高いということをもう少し考えて欲しかった。
小学生ぐらいまではギリギリ気づかれないかもしれないが、性知識がついてくる中高生ともなれば、あだ名は「中出し」もしくは「精子」だろう。
そして彼がインストールしてしまったアプリこそが「AVアプリ」である。
見るからに怪しいアプリだが、彼女いない歴=年齢の童貞として「AV」というアプリ名には惹かれるものがあり、起動してアプリの概要を見ていると、白はいつの間にかラブホテルのような部屋に転移していた。
この間、わずか2ページである、未だかつてないスピード感だ。
いくら現代のアプリが便利と言っても、こんな芸当は無理である、白が困惑していると、今度はアプリに「対戦相手を選べ」的な表示がされる。
逃げ出そうにも体が動かない白は強制的に相手を選ぶことになるのだが、そこに密かに気になっていた大学のミステリアスな美人同期生「処女谷芙蓉(おとめたにふよう)」の名前があることに気づく。
これも一生背負うになかなか重い名前だ、世が昭和なら「処女谷さんはやっぱりバージンなの?」というセクハラを5億回受ける羽目になっただろう、舞台が令和(たぶん)で感謝だ。
どうせならと白が芙蓉を選択すると、芙蓉も瞬時に部屋に転移してくる。
そんなわけで、読み始めて5分も立たないうちに、主人公はラブホでヒロインと相対することとなった、話が早くて本当に助かる。
2人が戸惑っていると、謎の声が「これから2人にはゲームをしてもらう」と宣言し、拒んだり、こちらの正体を詮索すると、命がないかのような圧をかけてくる。
特に説明もなくセックスできるだけのアプリかと思いきや、急にデスゲームみを帯びてきた。
しかしデスゲームであれば「これからお前らを鎖で繋いでノコギリを1本渡す」等の野蛮極まりないゲームが始まるところだが、幸いこれはエロラノベなので、始まるゲームはもちろんエロゲームだ。
2人にはいくつかのお題が出され、そのお題をクリアするごとに賞金が与えられ、制限時間内に得た賞金は2人のものになる。
賞金額は難易度によって変わり、一番簡単なので「インタビュー」「手を繋ぐ」などで1000円、そして最高額はアナルセックス10万円である。
ちなみに謎の声は「暇つぶしに人間の欲望を見物したい」と神のようなことを言っているのだが、神にしては設定額にデフレを感じる。
しかし、賞金は民間テレビ局レベルでも、相手は人間を転移させるぐらいはできる存在だ、逆らっても余計怖いことになるだけと察した2人は、とりあえず一番簡単なミッションをクリアする。
すると、本当に天から千円札が降ってきたのである。
ここで芙蓉の目の色が変わる。
芙蓉は、シングルマザー家庭の長女であり、下には弟妹が6人もいる、金はいくらあっても足りず、援助交際でもしようかと思い詰めていたところだった。
それがこんなに簡単に金が手に入るというのは芙蓉にとってもはやラッキーである。
幼子たちを抱え、覚悟を決めた女に迷いはない。
とはいえ、アナルはさすがに童貞と処女の自分達には荷が重いということで、その次の「膣内射精(なかだし)5万円」に目をつける。
ちなみに中出しは回数無制限なため、何発もやればやるほど賞金が増える仕組みである。
芙蓉が望むなら遠慮はいらぬと、白は中出の名に恥じない中出しっぷりを披露し、前戯などを合わせて合計197万円の賞金を獲得するのだった。
常人なら「中出赤」になっているところである。
これに味を占めた芙蓉は、このアプリを使う時はまた自分を呼んでほしい白に頼み、白はその条件として、他の男とは寝ない「専属女優契約」を芙蓉と結ぶことになる。
しかし、芙蓉は白が他の女と関係を持つのは止めないし、むしろ白の経験人数が増えアプリ内でのレベルが上げれば賞金も上がるかもしれないと、ハーレムを薦める始末であった。
芙蓉に割とガチ恋な白は芙蓉のドライな態度にモヤモヤしつつも、やっぱり自称経験豊富な陽キャのギャル、久地レオナに芙蓉を満足させる特訓と称して関係を持つなど、ハーレム化の道を進んでいくのであった。
この作品はまだ続刊中なので、このアプリを一体誰がなんのために作ったのかはまだ謎だが、やっていることが人間業ではないので、神的力が働いているのは確かである。
しかし、神にしてはアプリという人間のツールを使い、報酬が日本円だったりと随分こちらに寄せてきてくれている。 賞金が渋めなのも受け取りやすい金額ともいえる、二億とかだったら逆に怖くて受け取れない。 さらにミッションも基本的に卑猥のかぎりを尽くすだけである。
人間に理不尽なゲームを仕掛ける神はフィクションにたまに出てくるが、できればこういう神に呼び出されたい。
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Tweet漫画家兼コラムニスト。2009年に『クレムリン』で漫画家デビュー。近年は切れ味するどいコラムでも人気。『ひとりでしにたい』『負ける技術』『生き恥ダイアリー』など著書多数。一日68時間(諸説あり)のツイッターチェックを欠かさない。
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